恩愛しぐれ笠
 実は、来月巳の日、内の親分が勧進元で、花会を開く事に成ったんだ、そこでお前ぇ処の堂森だ。三日間だけ貸して貰えねぇだろうか!  どうせ手前等の腹の内ゃ見透かしだ、盆ゴザ一枚で、何れば堂森の縄張りを乗っ取る魂胆位わからずでどうする。子供騙しの下手な芝居は大層な大紋に傷が付くと帰って向田に伝えて置けっ・・・
 いいかっ、帰ったら・・・向田に伝えておけっ盆業稼業の習しは、素人衆には、善を施し、ヤクザの道には、仁義を尽くす、これが誠の任侠と言うものだ・・・
 お嬢さん、本来なら親分のお世話はおいら達が若ぇ者がしなくちゃならねぇのに、辛い思いをお掛けしちまって、勘弁してやっておくんなせぇ・・・  お嬢さん!聞いておくんなせぇ、おいらだってどれ程かお嬢さんが愛しいか、出来る事ならこの侭、義理も恩義もかなぐり捨てて、お前ぇさんをこの家からお連れしたい程の気持ちでござんすぜっ〜。
 そうしておくれ清太、お前となれば例え天竺黄泉の世までも、お吟は着いて参ります。
 向田の貸本さん年寄りの弱みに絡むようじぁ、折角の任侠に泥が付きやすぜ  あたしゃね、先っきまでここに入れてあった巾着が無くなって居るんだよぉ〜  何も知らない病気の親分は、俺とお嬢さんとを妻合わせて鳥越一家の二代目を継がせてやろうと、言っていなさるんだが・・・
 そこで頼みってぇのは、この仮祝言をお前さんにぶち壊して貰いてぇんだ・・・
 そりゃあたしゃ見ての通りの阿婆擦れだよ!
 そりゃああたしはね、そこらの犬に噛まれた位に思ゃあ、まあ諦めも付くが、諦めの付かないのは、このお腹の中のやや子だよ!
 半次郎、勘弁して呉れぇ、話しは聞いた。
 お前其処までの温けぇ心があったとは知らず、分別のねぇ悪態雑言、許してくれぇ〜。
 親分、鳥越の二代目は清太に継がしてやっておくんなせぇ・・・。
 俺達ちゃあ鳥越一家の為に思って持ち出した話しだぜ、何が気に喰わねぇんだ・・・
 どうせ縄張り欲しさの仕掛け話し、ネタはちゃんと割れてるぜ、三代続いた鳥越をお前さん達にみすみす渡す訳にゃあいかねぇんでなっ。
 悪いが引き取って貰おぅかい・・・。
 どうせ綺麗事を言ったって所詮はヤクザ、此の方が、話しは早ぇや。
 向田の鉄蔵ッ、何時はこうなる渡世の掟だ、観念しなっ
 ねぇお願いだからさぁ・・・私も一緒に連れて行っておくれよぉー
 清太、聞いての通りだ、これから先は俺一人じゃねえんだ、この姐さんが一緒だとよぉ〜
 兄貴、達者でなぁ〜〜
 半次郎、元気でね〜〜