瞼 の 母
 お見かけの所、大紋背負ったご同業のようでござんすが、お身内衆がこの様なら、立派な親分さんの顔に泥を塗るような物ですぜ。恥じをかかねえ内に早く帰ぇりなせぇ  とっつあん!その女将さんには在所に生み残して来た、子供が居たとは聞かねぇか・・・  花の盛りも五月雨の露に打たれた母恋烏、目指すは大江戸柳橋、とっつあん!縁が有ったらまた逢おうぜ
 女将さん、もしや、あっし位の、年頃の男の子を、持った覚えはござんせんか?  お前ぇさんが30年前、腹を痛めて生んだ伜の忠太郎でござんす。  親にはぐれた小僧っ子がグレたを叱るは、無理な話しよ。ぐちじゃねぇ、未練じゃねぇ、尋ね尋ねた母親に、親子と呼んでもらえぬ様な・・・こんなヤクザに一体ェ〜、誰が、したんでぇ
 親子と思って訪ねて見たが、考えて見りゃあ俺も馬鹿よ骨を折って・・・夢を消して仕舞ったぁ・・・  おっ母さん、
 あの人・・・私の兄さんじゃないの
 忠太郎に間違いがなければいいが・・・
 忠太郎ぉう〜〜〜
 おれを番場の忠太郎と知っての待ち伏せか・・・  親だと?
 お前さん、今親だと言いなすったなっ何がっ!親だぁ〜ぁ
 優しい 俺のおっ母さんは、瞼を合わせりゃあ浮かんでくらあ・・・
 逢いたくなったら、逢いたくなったら・・・
 目をつぶるんだぁ〜〜