名月赤城山
 浅の奴、親分の言葉を真に受けて、本気て勘助父っつあんの首を切ろうなんて料簡を起こしたんじゃねぇだろうな。  おい松、浅兄ィを見なかったか。  円蔵どん、親分の方は頼んだぜッ
 浅太郎ぉ〜頼むから早まるなょう〜
 お前ぇ何時からそんなに水臭くなったんでぇ
 天にも地にも二人だけの身内じゃねぇか、何の気兼ねが居るんでぇ〜
 いいか浅ぁ…
 こうなる事ぁ〜お前がここの敷居を跨いだその折りから…
 俺にぁすでに覚悟は出来ていたんだぁ
 あ、浅ぁ・・・、山に帰ったなら忠、忠次親分に伝えてくれぇ
み、三室の勘助は、け、決して親分を、恨んじゃいねぇ笑って死んでいったとなぁ〜
 だがなぁ…浅よ
 こうして恩義の為に落とす命は惜しくはねぇが…この世に一つ心残りは…
 叔父貴っ!勘坊の事なら心配しねぇでくれぇ〜
 たとえ義理の為とは言いながら
血肉を分けた叔父貴を此の手に掛けて殺すとは、ヤクザな甥を持った因果と諦めて迷わず成仏してくんね
 勘坊ッ、男一匹一度は潜らなきゃあならねぇ修羅場の中だ勘坊男だ泣くものか・・・
 今叔父ちゃんが歌など唄ってやろうから、泣かずにねんねを・・・・・
するんだぞぉ〜
 浅ぁ〜あらぁ・・・血迷って居たんだ、勘弁してくれぃ〜〜
 親分ほどのお人が血迷ったで、いちいち首を打ちなすったんじゃあ、打たれる方はたまった物じゃあござんせん
 赤城の山も今宵限り、生まれ故郷の国定村や国を捨て、縄張りを捨て、はたまた可愛い子分の手前達とも別れ別れになる門出だっ・・・浅あ・・・  加賀の住人小松五郎義兼が鍛えし業物、万年溜の雪水に洗い清め、俺には、生涯手前ぇと言う、強い味方があったのだ〜
 盛りの夢も今日限りだ、人の落ち目と木の葉の露は風の吹きよで流れ旅、我が身の末に当てはめて思えば忠次も〜〜〜
旅烏かぁ〜〜〜